Blog・News2019年 第36回日本障害者歯科学会学術大会
金曜日から休診にしてご迷惑をおかけしました。
第36回日本障害者歯科学会学術大会2019年11月22日(金)〜24日(日)に長崎県歯科医師会地域福祉委員会のメンバーとして参加してきました。
(於 長良川国際会議場、都ホテル岐阜長良川) http://jsdh36.umin.jp
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(写真は清流・長良川と金華山、岐阜城です)
2016年に障害者総合支援法が改正され、法律に「医療的ケア児」という文言が明記されました。
医療的ケア児・重症心身障害児は10年前に比べて18,000人と2倍に増えました。
歯科項目に関しても保険点数の項目が増え、障害者歯科や訪問歯科診療を取り巻く環境は整備され始めています。
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長崎県下にも何人か障害者歯科認定医の先生方がいらっしゃいますが、私自身は障害者歯科の認定医ではありません。
しかしながら、県・市の歯科医師会・地域福祉委員会として携わり、私たちは特別支援学校や民間の障害者施設と様々な事業を行ったり、連携する立場にあります。
今回の学会も参加し、個人としても大変有意義なものになりました。
いくつか抄録から現在の障害者歯科、訪問歯科診療を取り巻く環境などについてよく説明されているものを紹介させていただきます。
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(松野頌平先生抄録紹介)
歯科医療従事者が適応すべきエポックメイキングが目前に迫ってきている。この過程にかかわる医療的・社会的因子と挙げられるのが、「超高齢社会の進展」と「周産期医療の進展」である。
2025年問題で論じられている後期高齢者の急増、障害者やその介護者の高齢化などの影響により、これまでは通院可能であった患者層が通院困難となり、高齢者における訪問診療の需要が増大することが予想されている。
一方、医療の進歩により、医療的ケア児(NICU 等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃瘻等を使用し、痰の吸引や経管栄養等の医療的ケアが必要な障害児のこと)の数が10年間で約2倍に増加しており、訪問診療を必要とする子どもも今後さらに多くなることは明白である。
このような時代の変遷のなかで、子どもから高齢者まで、障害児者の幅広いニーズに対応した訪問歯科診療を実践できる体制の構築が期待されている。
訪問歯科診療の重要なミッションのひとつは、障害児者の日常生活を支えることであり、その要素として、①生命の安全、②健康の維持、③社会生活の保証、が必要である。これらを達成するために、歯科医療従事者が実践すべきNext stageは、障害児者の嚥下障害マネジメントである。(以下略)
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上記は「医療的ケア児」などの訪問歯科診療に携わる松野先生の抄録からの引用です。これからの情勢をよく捉えた抄録です。(本質を捉えた見事なものなので何も変えず転載いたしました。)
またこれが要介護高齢者に対する訪問歯科診療であっても、①生命の安全、②健康の維持、③社会生活の保証などは変わらないと思います。
在宅医療は今後の在宅患者の増加に対して、さらなる多職種の連携や技術の習得など、未曾有の変化に対応する時期になっていることを再認識させられます。
医師、看護師、そして両親、技術を習熟した施設のケアスタッフは気管カニューレの交換・喀痰の吸引や在宅の人工呼吸器のセッティングを行います。
しかしほとんどの歯科医師がそれらを行うことができないことと考えられます。直接行うことが必要ないとしても、AEDなどと同様に医療知識として習得し、医療用デバイスが正しい状態で使用されているかを確認できることが望ましいことと考えます。
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特別講演では衆議院議員、現衆議院予算委員長である野田聖子氏を迎え講演が行われました。
「今求められる医療的ケアとは」として母親である現在と負担や仕事との両立や少子化、現在の法整備などについての話を拝聴しました。
野田聖子氏は氏の実子が重症心身障害児「医療ケア児」であることを公言されています。
母親としての言葉をとても重く感じました。
こちらの抄録や内容もご紹介します。
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(衆議院議員野田聖子氏抄録の紹介)
〜生活の場において多職種が包括的に関わり続けるインクルーシブ教育や、医療・保健・教育・福祉の切れ目のない支援体制も重要であり、現在もそれらの構築に取り組んでいるところである。
〜(中略)〜
医療的ケアを必要とする子ども達が自宅から出られない状況を取り払うことや、同年代の子ども達と触れ合う環境を整備することは、医療的ケア児の成長をより引き出す大切な環境であることを、今まさに身をもって感じているところである。〜
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障害児・者の両親、また介護においても、家族の負担や疲弊、臨床心理について、今までメインにフォーカスを合わせる機会はありませんでしたが、切れ目のない医療体制、社会体制を考えた場合、レスパイト(一時預かり)やショートステイといったものに医科、訪問看護、臨床心理士との連携は不可欠です。
今後の歯科は地域の脳血管疾患のリハビリテーション連携は当然として、県下の小児在宅・摂食嚥下のニーズを拾い上げ、適切な連携と技術の習得を目指す必要性があります。
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最後に今回の障害者学会の報告をネットのニュースであった、同じ日に長崎や広島を訪れたローマ教皇の言葉でこの報告を終わりたいと思います。
フランシスコ教皇は「日本は効率性と秩序によって特徴付けられている。それだけにとどまらず、より一層人間らしく、思いやりのある、いつくしみにみちた社会を作り出したいという熱い思いを感じました」と今回の訪問を通じた日本と日本の人たちの印象を語りました。
「どんなに複雑な状況であっても自分たちの行動が公正かつ人間的であり、正直で責任を持つことを心がけ弱者を擁護するような人になってください。ことばと行動が偽りや欺まんであることが少なくない今の時代において特に必要とされる誠実な人になってください」
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私たちの想いが未来に試されています。