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車椅子は乗れば良いというわけではないようです(訪問歯科診療において)
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先日、施設で看護師さんに「食べ続けることができません」と相談を受けました。

前のめりの格好で、右手を固定して体を引き寄せるような姿勢・ポジショニング。

筋肉がガチガチに固まってしまう、「拘縮」でもあるのかと、

「〇〇さん、ちょっと(私の)手を握ってみてもらって良いですか?」

ぎゅ〜っと握り返すその手には力があり、柔軟に関節も動く。

足腰は弱くなっているとはいえ、体が動かないないわけでなさそう。

食思もあり、体重も変化なく、サルコペニアフレイルの類ではなさそう。

 

でも写真の通りに随分と前のめり。

 

(自分の状態を引き寄せる手の位置が悪いだけなのか?)

 

ふと思いつく。

(総合医療センターの作業療法士のMさんに聞いてみよう。)

 

私たち歯科医師会の福祉の委員会は多職種の方と連携してよく研修会を開催します。

それぞれの職域の立場や視点から、口から食べることをサポートしたり、レクチャーをしていきます。

作業療法士(OT)のMさんは長崎県歯科医師会中心の「口のリハビリテーション研究会」や

回復期病院を中心とする佐世保地域リハビリテーション協議会(広域リハ)において研修会を開催する中心的なメンバーの一人で、

何年もお付き合いさせていただいているセラピストの方です。

看護師さんに断って、早速、写真を送らせていただいたところ、たまたますぐ連絡がつきました。

「写真では少し分かりにくいのですが、車椅子が〇〇製ですね」

「後ろの「背張り(背もたれ)」の部分がマジックテープですね?」

「膝の下が浮いているようなので、足を乗せているフットプレートを外して足が下につくようにしてください」

「「円背」の傾向が強いので、背張りのマジックテープを外してゆるめてください」

「骨盤を立てるので、少し前にずれて座ってもらって、当てられるのなら腰にタオルを当ててください」

電話越しでも的確に指示をくれます。

上の写真はものの何分後の前後の比較写真です。

写真では顔を出していないので分からないですが、

ひじかけなどを強く掴んで体を引き寄せていた力は弛み、

力が入っていたキツイ表情も消え、自然な形に見え、リラックスしました。

OTのMさんの的確な指示で写真通りに「姿勢」が変わりました。

車椅子もメーカーや価格による種類があり、特徴も違います。

しかし、患者(利用者)さんが理想とする「姿勢」は基本的には変わりません。

この患者さんのリラックスと姿勢の安定を見た時は

看護師さんと顔を見合わせました。

看護師さん曰く「最初に教えて欲しかった」とのこと。

納入の業者さんも使用方法は教えますが、

個々の車椅子のフィッティングまではカバーできないこともあるでしょう。

老人介護保健施設などではリハビリを目的として、

理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などセラピストの先生方がいらっしゃいます。

しかし有料老人ホームでは、車椅子のフィッティングを行える人も少ないでしょう。

最近では多職種のアプローチとして正式に「ミールラウンド」と言って、

食事を摂るための多職種によるカンファレンスもあるのですが、

そういったことを必ずしも全ての施設が行うことができている訳ではありません。

 

しかし、今回は

多職種によるアプローチだから気付く、

多職種の繋がりがあるから事例を解決できる、

多職種と連携することで学ぶことができる、など

結果として連携は利用者・患者の満足度を上げ、

お互いの気付かない点を補填することもできました。

 

今は歯科も自院のみに閉じこもっているようでは

社会について行けず、「ガラパゴス(諸島)」化、

つまりは独自進化になってしまう可能性もあります。

(進化なら良いのですが、周りから見て「退化」はイヤですよね)

 

通常の歯科診療ももちろん必要ですが、

私たち歯科医師も社会や地域に必要とされていることを

クローズアップしていかなければいけません。